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Study Column — Vol.11

正弦定理と余弦定理、どっちを使う?
図形と計量で迷わなくなる考え方

2026.10  |  Math Strategy  |  読了時間:約10分

授業で三角比の問題を出すと、公式はちゃんと覚えているのに、ノートに三角形を描いたところで手が止まってしまう生徒がよくいます。「何を使えばいいのかわからない」と聞くと、正弦定理も余弦定理も面積の公式も、どれも言えるのです。足りないのは公式の知識ではなく、「この問題ではどれを使うか」を決める手順のほうでした。

この記事では、三角比の意味を身近なものでつかみ直したうえで、「問題文でわかっているもの」から使う定理を選ぶ判断表を紹介します。共通テスト数学I・Aでは、図形と計量は第1問(数と式・図形と計量)で出題される必答範囲です。選択で逃げることはできないので、ここを迷わず解けるようにしておく価値は大きいです。

三角比は「はしごの角度と高さ」の話

壁に長さ5mのはしごを立てかける場面を想像してください。はしごを寝かせるほど先端は低くなり、立てるほど高く届きます。つまり、はしごの長さが同じなら「地面との角度」だけで「届く高さ」と「壁からの距離」が決まります。三角比はこの関係に名前をつけたものです。

実際に計算してみる

はしごと地面の角度が60°なら、届く高さは 5×sin60°=5×(√3/2)=5√3/2(約4.33m)、壁からはしごの足までの距離は 5×cos60°=5×(1/2)=5/2=2.5m です。「長さ×sin で高さ、長さ×cos で横の距離」と一度体で覚えておくと、図形の問題で高さを出したいときに迷いません。

BASIC

斜辺×sin=高さ、斜辺×cos=横の長さ

三角比は「割合」。斜辺の長さに sin を掛ければ高さ、cos を掛ければ横の長さになる。この感覚が、あとで出てくる面積公式 S=(1/2)ab sinC の意味にもつながる。

使う定理は「わかっているもの」で決まる

ここからが本題です。三角形の問題では、問題文から「どの辺とどの角がわかっているか」を書き出すと、使う道具がほぼ自動的に決まります。

わかっているもの求めたいもの使う道具
2辺とその間の角残りの辺余弦定理 a²=b²+c²-2bc cosA
2辺とその間の角面積面積公式 S=(1/2)bc sinA
3辺角余弦定理を変形 cosA=(b²+c²-a²)/(2bc)
1辺と2つの角他の辺正弦定理 a/sinA=b/sinB(=2R)
外接円の半径辺や角正弦定理 a=2R sinA
2辺と、その一方に向かい合う角残りの角正弦定理(三角形が2つできる場合あり)

覚え方のコツは、正弦定理は「辺と、その向かいの角」がセットでそろっているときの道具、余弦定理は「角を1つ挟む2辺」か「3辺全部」がそろっているときの道具、と分けることです。問題を読んだら、まず三角形の図に「わかっている辺・角」に印をつけ、表のどの行に当てはまるかを確認してから計算を始めましょう。

例題1:3辺から角と面積を出す

3辺が 5、7、8 の三角形で、長さ7の辺に向かい合う角を θ とします。3辺がわかっているので余弦定理です。cosθ=(5²+8²-7²)/(2×5×8)=(25+64-49)/80=40/80=1/2 なので θ=60°。角がわかれば、今度は「2辺とその間の角」の行に移って面積が出せます。S=(1/2)×5×8×sin60°=20×(√3/2)=10√3 です。

ここで大事なのは、1つの道具で終わらず「求めた値を使って表の別の行に移る」流れです。共通テストの小問は、この乗り換えを2〜3回くり返す構成になっていることが多いです。さらに正弦定理を使えば外接円の半径も出せて、7/sin60°=2R より R=7/(2×(√3/2))=7/√3=7√3/3 となります。

例題2:1辺と2角から他の辺を出す

A=45°、B=60°、a=4 の三角形で b を求めます。わかっているのは「辺 a と、その向かいの角 A」のセットと、角 B。正弦定理の出番です。4/sin45°=b/sin60° より b=4×sin60°/sin45°=4×(√3/2)÷(√2/2)=4√3/√2=2√6。同じ式から外接円の半径も 2R=4/sin45°=4√2 なので R=2√2 とわかります。

鈍角が出てきたら cos の符号に注意

指導していて一番多いミスが、鈍角の cos の符号です。cos120° を 1/2 と書いてしまう生徒は毎年必ずいます。

はしごの話に戻ると、cos は「横にどれだけ進んだか」でした。角度が90°を超えると、はしごは壁と反対側に倒れて、横の進み方がマイナスになります。だから鈍角の cos は負、sin は高さなので鈍角でも正のままです。式で書くと sin(180°-θ)=sinθ、cos(180°-θ)=-cosθ。たとえば cos120°=-cos60°=-1/2、sin120°=sin60°=√3/2 です。

CHECK

余弦定理で cos が負になったら鈍角

3辺が 4、5、7 の三角形で、長さ7の辺に向かい合う角を調べると cos=(16+25-49)/(2×4×5)=-8/40=-1/5。負なのでこの角は鈍角。「一番長い辺の2乗」と「残り2辺の2乗の和」を比べるだけでも判定できる(49>16+25=41 なので鈍角)。

「三角形が2つできる」ケースを見落とさない

正弦定理で角を求めるとき、sin の値から角を1つに決めてしまうのも典型的なミスです。sinθ=1/√2 になる角は 0°〜180° の範囲に 45° と 135° の2つあります(sin は「高さ」なので、左右対称な2つの角で同じ値になる)。

例題3:2つとも三角形になる場合

A=30°、a=√2、b=2 の三角形で B を求めます。正弦定理より sinB=b sinA/a=2×(1/2)/√2=1/√2。よって B=45° または 135° です。それぞれ A+B が 180° 未満になるか確認すると、45° なら 30°+45°=75°、135° なら 30°+135°=165° で、どちらも三角形として成立します。このとき C は 105° と 15° の2通りになり、形の違う三角形が2つ描けます。

逆に、角の和が 180° 以上になる候補は捨てます。「sin から角を出したら、候補を2つ書いて、角の和で振り落とす」までを1セットにしておくと、共通テストで「三角形はいくつあるか」と聞かれても慌てずに済みます。

実際に解いてみよう(MATHACA standard 収録問題)

三角形 OAB で OA = 3、OB = 4、∠AOB = 60° のとき、AB の長さと三角形の面積を求める手順として正しいものはどれか。

現場でよく見るつまずき

よくある質問

Q. 正弦定理と余弦定理、どちらでも解けそうなときはどうすればいいですか?

A. 迷ったら計算が軽いほうを選びます。正弦定理は掛け算と割り算だけで済み、余弦定理は2乗の計算が入ります。ただし「角を求めたい」場合は、正弦定理だと sin から角が2つ候補に出てしまうことがあるのに対し、余弦定理の cos は 0°〜180° の範囲で角が1つに決まります。角を確定させたいときは余弦定理のほうが安全です。

Q. sin・cos・tan の値の表を全部暗記しないといけませんか?

A. 共通テストでよく使うのは 30°・45°・60° と、それに 90°・120°・135°・150° を加えた角です。全部を丸暗記するより、30°・45°・60° の3つを直角三角形(1:√3:2 と 1:1:√2)から出せるようにし、鈍角は「sin はそのまま、cos は符号が逆」で導けるようにしておくほうが、本番で忘れても復元できます。

Q. 図形の問題で、そもそも三角形が描けません。

A. 問題文を読みながら、出てきた辺と角を1つずつ図に書き込んでいくのが一番の近道です。図はきれいでなくてかまいません。わかっている値を書き込むと、判断表のどの行に当たるかが目で見て判断できるようになります。

まとめ

✦  三角比は「斜辺×sin=高さ、斜辺×cos=横の長さ」という割合として理解する

✦  問題文で「わかっている辺・角」に印をつけ、判断表で使う定理を決める

✦  1つ求めたら、その値を使って表の別の行に乗り換える

✦  鈍角の cos は負。余弦定理で cos が負なら鈍角

✦  sin から角を出したら候補を2つ書き、角の和で振り落とす

MATHACAでは、図形と計量の問題を Basic から Exam まで段階的に練習できます。「どの定理を使うか」の判断は、基礎問題を繰り返すほど速くなります。まずは基礎を固めて、共通テストの平均点を超える力をつけましょう。

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