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Study Column — Vol.12

データの分析は「平均だけ見ない」が9割
分散・相関・外れ値・仮説検定の読み方

2026.10  |  Math Strategy  |  読了時間:約10分

データの分析の問題を解かせると、分散や平均の計算はきちんとできるのに、「次の記述のうち正しいものを選べ」という読み取りの設問で点を落とす生徒がとても多いです。計算の手順は覚えていても、「この数字は何を表しているのか」がつかめていないまま問題に向かっているからです。

共通テスト数学I・Aでは、データの分析は第2問の後半(2次関数と同じ大問)で出題されます。ここで問われるのは、複雑な計算よりも、グラフや数値から「何が言えて、何が言えないか」を判断する力です。新課程では外れ値と仮説検定の考え方も学習内容に加わりました。この記事では、それぞれの数値の「意味」から順に整理していきます。

平均が同じでも、中身はまったく違う

ゲームで、2人のキャラクターのどちらを使うか迷っているとします。5回攻撃したときのダメージを記録すると、こうなりました。

どちらも平均ダメージは 50 です。でも使い心地はまるで違います。Aは毎回ほぼ50を安定して出しますが、Bは0のときもあれば100のときもある「当たり外れ」の大きいキャラです。平均だけを見ていると、この違いがまったく見えません。

この「平均のまわりにどれだけ散らばっているか」を1つの数値で表したものが、分散と標準偏差です。

実際に分散を計算してみる

分散は「平均からのズレ(偏差)を2乗して、その平均をとったもの」です。キャラAの偏差は -2、0、2、0、0 なので、分散は (4+0+4+0+0)÷5=1.6。キャラBの偏差は -50、50、-30、30、0 なので、分散は (2500+2500+900+900+0)÷5=1360 です。標準偏差は分散の正の平方根で、Aは √1.6(約1.26)、Bは √1360(約36.9)になります。ダメージで言えば「Aはだいたい平均から1ちょっと、Bは平均から37くらいぶれる」というイメージです。

WHY

なぜ2乗して、なぜ√に戻すのか

偏差をそのまま足すと、プラスとマイナスが打ち消し合って必ず0になる(キャラBでも -50+50-30+30+0=0)。そこで2乗してすべて正の数にしてから平均をとる。ただし2乗したことで単位も「ダメージの2乗」になってしまうので、√をとって元の単位に戻したものが標準偏差。

データを変換したときのルール

共通テストでは「全員の点数に5点を加えた」「単位をcmからmに直した」のように、データをまとめて変換したときに各数値がどう変わるかがよく問われます。ルールは表の通りです。

変換平均値分散標準偏差
全員に c を足すc だけ増える変わらない変わらない
全員を k 倍する(k>0)k 倍k² 倍k 倍

「足す」はグラフ全体を横にずらすだけなので、散らばり具合は変わりません。「k倍」は散らばりの幅も k 倍に広がりますが、分散は2乗した値の平均なので k² 倍になります。たとえば 4、6、8、10、12 点(分散8)を、200点満点に換算するため全員2倍にすると、8、12、16、20、24 点になり、分散は 8×2²=32、標準偏差は √8=2√2 の2倍の 4√2 になります。

なお、2つの変量それぞれに正の数を掛けたり定数を足したりしても、相関係数は変わりません。相関係数は「単位に関係なく、2つの変量の関係の強さだけを表す数値」として作られているからです。

相関係数と「相関があっても原因とは限らない」

2つの変量の関係は散布図で見ます。点が右上がりに並べば正の相関、右下がりなら負の相関で、その強さを表すのが相関係数 r です。r は必ず -1 以上 1 以下の値をとり、1 や -1 に近いほど点が一直線に近く並び、0 に近いほど直線的な関係が弱くなります。

読み取り問題でよく狙われるのが、「相関がある=一方が原因でもう一方が起こる」と決めつける選択肢です。たとえば夏の間、アイスクリームの売上と熱中症で運ばれる人の数を並べると、どちらも気温が高い日に増えるので正の相関が出ます。しかしアイスを食べたから熱中症になるわけではありません。「相関がある」と「原因と結果の関係がある」は別物だと覚えておきましょう。

外れ値は「箱の長さの1.5倍」で判定する

新課程では、外れ値の判定方法も学びます。教科書で使われる基準は、第1四分位数(Q1)と第3四分位数(Q3)の差である四分位範囲を使ったものです。

RULE

外れ値の基準

Q1-1.5×(四分位範囲)以下、または Q3+1.5×(四分位範囲)以上の値を外れ値とする。四分位範囲は箱ひげ図の「箱の長さ」にあたる。

外れ値があると平均はどう動くか

ある8人が1か月に読んだ本の冊数が 2、4、6、8、10、12、14、40 だったとします。下半分 2、4、6、8 の中央値から Q1=(4+6)÷2=5、上半分 10、12、14、40 の中央値から Q3=(12+14)÷2=13、四分位範囲は 13-5=8 です。上側の基準は 13+1.5×8=25 なので、40 冊は外れ値と判定されます。

このとき平均値は (2+4+6+8+10+12+14+40)÷8=96÷8=12 冊ですが、中央値は (8+10)÷2=9 冊です。たった1人の40冊に引っぱられて平均だけが大きくなっています。外れ値があるデータでは、平均より中央値のほうが「真ん中あたりの人」の実態を表しやすい、というのが読み取り問題の定番の論点です。

仮説検定は「めったに起きないことが起きたか」で判断する

新課程で加わった仮説検定の考え方も、身近な例で考えるとシンプルです。

友達が「このコインは表が出やすい」と言い、10回投げたら9回表が出たとします。本当に表が出やすいのでしょうか。ここで「もしこのコインが表裏が同じ確率で出る普通のコインだったら」と仮定して、「10回中9回以上表」がどれくらいの確率で起きるかを計算します。表がちょうど9回の出方は 10通り、10回全部表は 1通りで、全部の出方 2¹⁰=1024通りのうち 11通り。確率は 11÷1024 で約1.1%です。

「普通のコインなら約1.1%しか起きないことが起きた」ので、「普通のコインだ」という仮定のほうが疑わしい、と判断します。どのくらい珍しければ仮定を疑うかの基準は問題文で与えられ、5%がよく使われます。

一方、10回中8回以上表だった場合は、出方が 45+10+1=56通りで、確率は 56÷1024 で約5.5%になり、基準の5%を下回りません。このときは「表が出やすいとは判断できない」となります。注意したいのは、これは「普通のコインだと証明された」という意味ではないことです。「表が出やすいと言えるほどの証拠はない」というだけで、この言い回しの違いが選択肢でそのまま問われることがあります。

読み取り問題で失点しないためのチェック

実際に解いてみよう(MATHACA basic 収録問題)

クラス全員のテストの点数を、100点満点から200点満点に換算するため一律で k 倍(k > 0)したとき、分散と標準偏差はどう変わるか。

よくある質問

Q. 分散の公式が2つあって、どちらを使えばいいかわかりません。

A. 「偏差の2乗の平均」と「(2乗の平均)-(平均の2乗)」の2つはどちらも同じ値になります。平均が整数でデータが少ないときは前者、平均が小数になるときは後者のほうが計算が楽なことが多いです。たとえば 4、6、8、10、12 では、2乗の平均は (16+36+64+100+144)÷5=72、平均の2乗は 8²=64 で、72-64=8。偏差から計算した分散 8 と一致します。

Q. 標準偏差と分散、問題ではどちらを使えばいいですか?

A. 「ばらつきの大小を比べる」だけなら、どちらを比べても大小関係は同じです。ただし「平均から何点くらい離れているか」をデータと同じ単位で考えたいときは標準偏差を使います。問題文がどちらを聞いているかを必ず確認しましょう。

Q. 仮説検定の問題は難しい計算が必要ですか?

A. 共通テストの数学I・Aで求められるのは、「仮定のもとで、その結果がどれくらい起こりやすいか」を確率やシミュレーション結果から読み取り、基準と比べて判断する流れです。上のコインの例のように、何を仮定して、何と比べているのかを言葉で説明できることが一番大切です。

まとめ

✦  平均だけでは比べられない。ばらつきは分散・標準偏差で見る

✦  全員に足す → ばらつきは不変。k倍 → 分散 k² 倍、標準偏差 k 倍

✦  相関があっても、原因と結果の関係があるとは限らない

✦  外れ値は「Q1-1.5×四分位範囲」「Q3+1.5×四分位範囲」で判定。外れ値があると平均は動きやすく、中央値は動きにくい

✦  仮説検定は「仮定のもとでめったに起きないことが起きたか」で判断する。「判断できない」は「仮定が正しい」という意味ではない

MATHACAでは、データの分析の問題を Basic から Exam まで段階的に練習できます。数値の「意味」を問う基礎問題を繰り返すことが、読み取り問題で迷わない一番の近道です。基礎を固めて、共通テストの平均点を超えましょう。

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