図形の性質は「比」と「円」の2本柱
角の二等分線・メネラウス・方べきの使いどころ
図形の性質の授業でいちばん多い質問は、「メネラウスの式は覚えたのに、どの三角形に使えばいいかわからない」です。公式そのものは1行で書けるのに、図の中から三角形と直線を選べないせいで手が止まってしまう。図形の性質は、公式を覚える分野というより「どの道具をどこに当てるか」を決める分野です。
共通テストの数学I・Aでは、図形の性質は第3問(20点)として出題され、大問4つすべてが必答です。範囲は広く見えますが、中心にあるのは「辺の比」と「円」の2本柱。この記事では、その2本柱に沿って、よく使う定理の使いどころを整理します。
柱1:辺の比 ── 角の二等分線から始める
角の二等分線は「となりの辺の比」に分ける
三角形 ABC で、∠A の二等分線が辺 BC と点 D で交わるとき、BD:DC=AB:AC が成り立ちます。辺 BC を「半分」に分けるのではなく、「A のとなりにある2辺の比」に分けるのがポイントです。
なぜそうなるかは、面積で考えるとすっきりします。△ABD と △ACD は、BC を底辺と見ると高さが同じなので、面積の比は BD:DC です。一方、AD を共通の辺と見ると、どちらも「AD と、A のとなりの辺がはさむ角が ∠A の半分」の三角形なので、面積の比は AB:AC になります。同じ面積の比を2通りに表したので、BD:DC=AB:AC です。
実際に計算してみる
AB=5、AC=3、BC=4 の三角形で、∠A の二等分線と BC の交点を D とします。BD:DC=5:3 なので、BD=4×5/8=5/2、DC=4×3/8=3/2。足すと 5/2+3/2=4 で、BC の長さと一致します。
角の二等分線は「半分」ではない
BD:DC=AB:AC。辺 BC がちょうど半分に分かれるのは AB=AC(二等辺三角形)のときだけ。
チェバとメネラウスは「一筆書き」で覚える
2つの定理の形
三角形 ABC の辺(またはその延長)の上に点をとったとき、比どうしをかけると 1 になる、というのがチェバの定理とメネラウスの定理です。
- チェバの定理:三角形の3つの頂点から引いた3本の線が1点で交わるとき、(AF/FB)×(BD/DC)×(CE/EA)=1(F は AB 上、D は BC 上、E は CA 上の点)
- メネラウスの定理:1本の直線が三角形の3辺(またはその延長)を横切るとき、同じ形の積が 1
式の形はそっくりで、覚え方も同じです。「頂点 → 分点 → 頂点 → 分点 …」と、三角形のまわりを一筆書きでぐるっと1周するように比を書いていきます。A から出発して A に戻ってくれば、分子と分母の取り違えは起きません。
どちらを使うか
| 図の特徴 | 使う道具 |
|---|---|
| 頂点から引いた3本の線が1点で交わる | チェバの定理 |
| 1本の直線が三角形を横切っている | メネラウスの定理 |
| 角を2等分する線がある | 角の二等分線と辺の比 |
例題:交点で分けられる比を求める
三角形 ABC で、辺 AB を 2:1 に内分する点を P、辺 BC の中点を Q とし、線分 AQ と CP の交点を R とします。AR:RQ を求めましょう。
ここで大事なのが「どの三角形と、どの直線を見るか」です。求めたいのは AQ 上の比なので、AQ を1辺に持つ三角形 ABQ に注目し、それを横切る直線 CP(点 P、R、C を通る)にメネラウスの定理を使います。
三角形 ABQ のまわりを A から一筆書きで回ると、(AP/PB)×(BC/CQ)×(QR/RA)=1。AP/PB=2、BC/CQ=2(Q は BC の中点なので BC は CQ の2倍)を入れると、2×2×(QR/RA)=1 より QR/RA=1/4。よって AR:RQ=4:1 です。
同じように三角形 BCP と直線 AQ を見ると、(BQ/QC)×(CR/RP)×(PA/AB)=1 から 1×(CR/RP)×(2/3)=1 となり、CR:RP=3:2 も求まります。
式を書く前に「三角形」と「直線」を口に出す
メネラウスで迷う原因のほとんどは、三角形と直線を決めないまま比を書き始めること。「求めたい比を含む辺を持つ三角形」と「それを横切る直線」の2つを先に決めると、式は自動的に決まる。
柱2:円 ── 方べきの定理と内接四角形
方べきの定理は「同じ点から出る2本の線の積」
円と点 P があり、P を通る2本の直線がそれぞれ円と A、B および C、D で交わるとき、PA×PB=PC×PD が成り立ちます。これが方べきの定理です。P が円の内側にあっても外側にあっても、同じ形で使えます。
- 円の内側で交わる例:2本の弦 AB と CD が点 P で交わり、PA=4、PB=3、PC=6 のとき、4×3=6×PD より PD=2
- 接線がある例:円の外の点 P から引いた直線が円と A、B で交わり(A のほうが P に近い)、PA=3、PB=12 のとき、P から引いた接線の接点を T とすると PT²=PA×PB=36 なので PT=6
ここでのつまずきは、PB の代わりに AB を使ってしまうことです。方べきの定理は「点 P からの長さ」どうしの積なので、どちらも P から測った長さを使います。
円に内接する四角形は「向かい合う角の和が180°」
四角形 ABCD が円に内接しているとき、向かい合う角の和は 180° です。∠A=70° なら ∠C=110° になります。また、1つの角の外角は、それと向かい合う内角に等しくなります。逆に、向かい合う角の和が 180° になる四角形は円に内接する、という「逆」も問題でよく使われます。
あわせて押さえておきたいのが接弦定理です。円の接線と、接点を通る弦がつくる角は、その角の内側にある弧に対する円周角に等しくなります。接線が出てきたら、「方べき」と「接弦定理」の2つをまず疑うと、手がかりが見つかりやすくなります。
△ABCでAB=4、AC=6、BC=5。∠Aの二等分線がBCとDで交わるとき、BDとDCの長さを求めよ。
角の二等分線は、辺 BC を「A のとなりの2辺の比」AB:AC に分けます。BD:DC=4:6=2:3 なので、BD=5×2/5=2、DC=5×3/5=3 です。比を逆にして AC:AB にしてしまうミスや、「二等分線だから BC も半分」と考えるミスに注意しましょう。
よくある質問
Q. チェバとメネラウス、どちらを使うか毎回迷います。
A. 図の中に「1点で交わる3本の線」があればチェバ、「三角形を横切る1本の直線」があればメネラウスです。迷ったら、求めたい比を含む辺を1辺に持つ三角形を探し、その三角形を横切る直線があるかを見てください。多くの問題ではメネラウスのほうが出番が多くなります。
Q. 図形の問題で、補助線が思いつきません。
A. 共通テストの図形の性質は、問題文が誘導してくれる形が多く、自分で補助線を発明する場面は多くありません。まずは問題文に出てくる点と線をすべて図に描き込み、「比があるか」「円があるか」の2つを確認しましょう。そのうえで、角の二等分線・チェバ・メネラウス・方べき・内接四角形のどれが使えるかを順に当てはめていくと、たいていの問題は進められます。
Q. 図はどのくらい正確に描けばいいですか?
A. 定規やコンパスで正確に描く必要はありませんが、「比が極端にちがう図」は避けましょう。たとえば 2:1 の点を真ん中に描くと、答えの見当がつかず、計算ミスにも気づけません。だいたいの比を守って大きめに描くだけで、答えが図と合っているかを目で確かめられるようになります。
まとめ
✦ 図形の性質の中心は「辺の比」と「円」の2本柱
✦ 角の二等分線は BD:DC=AB:AC。「半分」ではない
✦ チェバ・メネラウスは三角形のまわりを一筆書きで1周して比を書く
✦ メネラウスは「三角形」と「横切る直線」を先に決めてから式を書く
✦ 方べきは「P から測った長さ」の積。内接四角形は向かい合う角の和が 180°
MATHACAでは、図形の性質の問題を Basic から Exam まで段階的に練習できます。角の二等分線やメネラウスの定理を、選択肢の「よくある間違い」と比べながら解くうちに、どの道具をどこに使うかが自然と身につきます。基礎を固めて、共通テストの平均点を超えましょう。
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