数と式は「かたまり」で見る
置きかえ・対称式・有理化・絶対値のコツ
「数と式」は、高校数学でいちばん最初に習う単元です。中学の計算の続きに見えるので、「計算をがんばれば何とかなる」と思われがちですが、授業で見ていると、点が伸びない生徒ほど式を1文字ずつバラバラに計算しています。逆に得意な生徒は、式の中から「ひとかたまり」を見つけて、計算そのものを短くしています。
共通テストの数学I・Aでは、第1問(30点)の前半〔1〕が「数と式」の範囲(集合と命題を含む)から出題されます。2025年は2次方程式の解をテーマにした計算に必要十分条件を組み合わせた問題、2026年は整数の集合を扱う集合と命題の問題と、年によって中身は変わります。ただ、どの年でも土台になるのは「式をかたまりで見る力」です。この記事では、そのコツを4つに分けて整理します。
コツ1:同じ形は「1つの文字」に置きかえる
引っ越しの段ボールと同じ
引っ越しのとき、本を1冊ずつ運ぶ人はいません。段ボールに詰めて、箱ごと運びます。式の計算も同じで、何度も出てくる同じ形は「1つの箱」とみなして、1文字に置きかえると一気に見通しがよくなります。
例1:(x+3)²+4(x+3)+4 を因数分解する
(x+3) が2回出てきます。これを t とおくと、式は t²+4t+4 になります。これは中学で習った形で、(t+2)² と因数分解できます。最後に t を x+3 に戻すと、(x+3+2)²=(x+5)² です。
いきなり (x+3)² を展開して x²+6x+9+4x+12+4 とやっても答えは出ますが、項が増えるぶん計算ミスの危険も増えます。
例2:x⁴-13x²+36 を因数分解する
x⁴ は (x²)² なので、x² を t とおくと t²-13t+36 になります。かけて 36、足して -13 になる2数は -4 と -9 なので、(t-4)(t-9)。t を x² に戻すと (x²-4)(x²-9) です。
ここで止めると減点です。x²-4 も x²-9 も、まだ「2乗-2乗」の形なので、さらに (x+2)(x-2)(x+3)(x-3) まで分解して完成です。
置きかえたら、最後に必ず「戻す」
t は計算を楽にするための仮の名前。答えは必ず x の式に戻し、戻したあとにまだ因数分解できないかを確認する。
コツ2:対称式は「合計」と「積」だけで決まる
2人の所持金のたとえ
AさんとBさんの所持金が、それぞれいくらかはわからなくても、「2人の合計」と「2人の所持金をかけた値」がわかっていれば、計算できることがたくさんあります。x と y を入れかえても形が変わらない式(x²+y²、x³+y³、1/x+1/y など)を対称式といい、対称式は必ず x+y と xy の2つだけで表せます。
例題:x=2+√3、y=2-√3 のとき
まず「合計」と「積」を出します。
- x+y=(2+√3)+(2-√3)=4
- xy=(2+√3)(2-√3)=4-3=1
√3 が両方とも消えて、きれいな整数になりました。あとはこの2つを使うだけです。
| 求めたい式 | x+y と xy での表し方 | この例での値 |
|---|---|---|
| x²+y² | (x+y)²-2xy | 16-2=14 |
| x³+y³ | (x+y)³-3xy(x+y) | 64-12=52 |
| 1/x+1/y | (x+y)/xy | 4/1=4 |
たとえば x²+y² を、x² と y² を別々に計算して求めると、(2+√3)²=7+4√3、(2-√3)²=7-4√3 で、足すと 14。表の答えと一致します。どちらでも答えは出ますが、x³+y³ のように次数が上がるほど、「合計と積」を使うほうが圧倒的に速くなります。
2乗の和は「2xy を引く」
(x+y)²=x²+2xy+y² なので、x²+y² を出すには (x+y)² から 2xy を引く。(x+y)² をそのまま答えにしてしまうミスが多い。
コツ3:有理化は「分母をきれいな数にする」作業
なぜ分母の √ を消すのか
1÷1.414… という割り算を筆算でするのは大変ですが、1.414…÷2 なら簡単です。分母から √ を消して整数にすると、その数がだいたいどのくらいの大きさなのかがすぐにわかります。これが有理化をする理由です。
例:1/(√3-1) を有理化する
分母の √3-1 に、符号だけを変えた √3+1 をかけます。(a-b)(a+b)=a²-b² の形になるので、分母は (√3)²-1²=3-1=2。分子にも同じ √3+1 をかけるのを忘れずに、答えは (√3+1)/2 です。√3 はおよそ 1.73 なので、この数はおよそ 1.37 だとすぐにわかります。
整数部分・小数部分もセットで
「√10 の整数部分を a、小数部分を b とする」という問題もよく出ます。9<10<16 なので 3<√10<4。整数部分は a=3 で、小数部分は「もとの数から整数部分を引いたもの」なので b=√10-3 です。小数部分を 0.16… のように小数で書くのではなく、引き算の形で表すのがポイントです。
このとき b(b+6) を求めると、b+6=√10+3 なので (√10-3)(√10+3)=10-9=1。ここでも「符号だけちがう2数をかけると √ が消える」形が活躍します。
コツ4:絶対値は「距離」、不等式は「向き」に注意
絶対値は数直線上の距離
|x-2|<3 は、「数直線の上で、x と 2 の距離が 3 より小さい」という意味です。家(2の位置)から3歩以内の範囲と考えると、左に3歩で -1、右に3歩で 5 なので、答えは -1<x<5 です。場合分けをしなくても、図をイメージするだけで答えが出ます。
もう1つ、よくあるつまずきが √(a²)=a としてしまうミスです。正しくは √(a²)=|a| で、たとえば √((1-√3)²) は 1-√3 ではありません。1-√3 は負の数(およそ -0.73)なので、絶対値をつけて √3-1 が正解です。
マイナスをかけると不等号の向きが変わる
2<3 は正しいですが、両辺に -1 をかけると -2 と -3 になり、今度は -2>-3 です。借金で考えると、2万円の借金より3万円の借金のほうが手元のお金は少ない、ということです。
たとえば -2x+3>7 を解くと、-2x>4。ここで両辺を -2 で割るので向きが変わり、x<-2 です。
連立不等式は、それぞれを解いてから数直線の上で重なる部分を探します。2x-3>1 から x>2、x+2<6 から x<4 なので、両方を満たすのは 2<x<4 です。
x = √5 + √3、y = √5 - √3 のとき x² + y² を求める途中式として正しいのはどれか。
x² と y² をそれぞれ展開すると 8+2√15 と 8-2√15 になり、√ の部分が打ち消し合って 16 が残ります。記事で紹介した対称式の方法でも、x+y=2√5、xy=2 から (x+y)²-2xy=20-4=16 と同じ答えになります。(x+y)² の 20 で止めてしまうミスや、x²+y² を (xy)² と取りちがえるミスに注意しましょう。
よくある質問
Q. 置きかえは、どんなときに使えばいいですか?
A. 同じ形が2回以上出てきたとき、または x⁴ と x² のように「ある式の2乗」が見えるときが合図です。置きかえる前に「この部分を1文字にしたら、知っている形になるか」を考えてみてください。知っている形にならないなら、置きかえ以外の方法を探すほうが早いことが多いです。
Q. 対称式の問題で、x と y をそのまま代入してはいけないのですか?
A. 代入しても答えは出るので、まちがいではありません。ただ、x=2+√3 のような数を3乗するのは計算量が多く、ミスもしやすくなります。共通テストは時間との勝負なので、「まず x+y と xy を出す」を習慣にすると、計算が短く、ミスも減ります。
Q. 有理化をしないで答えると、まちがいになりますか?
A. 共通テストは解答欄の形が決まっているので、多くの場合は有理化した形で答えることになります。分母に √ が残ったままだと、解答欄の形に合わないことがあります。答えを出したら「分母に √ が残っていないか」を最後に確認する習慣をつけましょう。
まとめ
✦ 数と式は、式を1文字ずつではなく「かたまり」で見ると計算が短くなる
✦ 同じ形は1文字に置きかえ、最後に必ず元に戻して、まだ分解できないか確認する
✦ 対称式は x+y と xy の2つで表せる。x²+y²=(x+y)²-2xy
✦ 有理化は「符号だけちがう数」をかけて分母の √ を消す
✦ 絶対値は数直線上の距離。不等式はマイナスをかけると向きが逆になる
MATHACAでは、数と式の問題を Basic から Exam まで段階的に練習できます。選択肢には途中式が並んでいるので、「どの変形が正しいか」を見分けるうちに、かたまりで見る目が自然と育ちます。計算の基礎を固めることが、共通テストの平均点を超えるいちばんの近道です。
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